3-12 day2 明けない夜はない、陽はまた昇る

3/12

夢を見ているような悲惨な災害が起きて一夜明ける。
殆ど眠れず、でも少し横になっただけでも
ちょっと休めることができたみたい。

階段見てみると、冠水が前日より上がってきているのがわかる。
何段あるか数えてみる。この段まできたら
救助要請を出そうというラインを決めた。
外を見ると、庭が海になっている。



ラジオを聞いたり、ツイッターを見ているとどうやら宮城県だけではなく、
福島や、岩手も様々なところで酷いことになっているみたいだ。
湊方面の姉達は無事だろうか、
仙台のCoupieのcobiさんや他の音楽家仲間のみんなは?
恋人の寛子ちゃんは?
気仙沼の友達は?

一気に不安がよぎるけれど、
昨日の自分の誓いを思い出し気合で冷静になる。
冠水もあるし、90歳になるお婆ちゃんのを
背負って水の中を歩き泳ぐのはお婆ちゃんに負担がかかりすぎる。
親とも相談してここは籠城することにして
とにかくラジオとツイッターで情報収集。

確かに実際こうなってはそれしか出来ない。じっと待つしかない。

嫌なニュースばかり耳にはいる。
石巻、南浜町壊滅、気仙沼は火の海、
南三陸町、女川、雄勝も壊滅状態。

とりあえず、旗代わりに赤いセーターを
ベランダに掲げて、人がいることを主張。
遠くと見ると、門脇方面?日和山?で嫌な黒煙が上がっている。



.............。

幸い、MacBookもeneloopのmobile boosterも満充電だったので、しばらくiPhoneは持ちそうだ。
現状把握、現状拡散。

カセットコンロも逃げる時に持って来ていたので無事でそれでお茶を作り、
お茶殻を食べて、非常食を減らさない様に頑張る。
お祖母さんは、かなり不満そうだ。
仕方が無い、少しだけ認知症も入っている90歳。お願いだから持ちこたえて欲しい。

水の残量がちょっと不安で、
食料も水没してないのがあると思うので、
意を決して、裸になり一階におりて水に入り食料を探しました。

水は濁っていて、水面には石油が浮いている。
この水を飲んだらアウトだなと思った。
幸い、カップラーメンや缶詰で大丈夫そうなものがあった。
10リットルの大きいボトルの水も
外においていたので外にも出てみる。
自分の家、敷地内で泳ぐことになるとは、、、

ボトルは殆ど流されていたけれど
2ボトル見つけてちょっと安心する。

「四倉さんですか!?」

と声がする。
迎えの布団屋のおじさんだ。
無事で何より。でも聞くと水も食料も
無いと言っておりこれはなんとかしなきゃと。

家に戻り、お湯をわかして水筒に入れて
ペットボトルにさっきの水を入れて、
カップラーメンと缶詰めをビニール袋に詰めてまた泳いで向かった。

布団屋さんも一階が完全に水没状態だったために、
二回の窓からロープを垂らしてもらいました。
ロープに野菜ジュースが括り付けてあり、
お礼とのこと。逆に有難い。
水筒など入ったビニール袋をロープに付けて
おじさんに引き上げてらい無事に受け渡しが完了した。
よかった。

家に戻ってから、身体が真っ赤になっててしばらく震えが止まらなかった。


携帯はやはり通じ辛い。
mixiもfacebookも出来るけれど、重いので
バッテリーが心配。でもTwitterは軽くて
通常通りできるみたいなので、
連絡はTwitterでやることにする。

みんなが心配してくれていて、
僕の無事を喜んでくれ、励ましてくれるのがとても嬉しい。

そんなこんなで夜が来てあたりは真っ暗。
仏壇から沢山蝋燭を持って来ていたので、
火事と一酸化炭素中毒に気をつけてキャンドルナイト。



みんな電気が無い。
車も動かない。
夜空がとても綺麗で、石巻から見る月が美しい。
こんなに変わるくらい、俺らは電気を使ってガソリンを使っていたのか。
クリスタルウォーターズの生活を思い出す。

と、思いに耽ると外から、
奇声が聞こえた。はじめは猫の盛り声だと思いたがったが、
聞けば聞くほど人間の声。
こんな寒い夜に水に浸かっていたら死んじゃう!!
窓を開けて懐中電灯を照らして見るも見えない、あまりにも木霊しているので、
方角も読み辛い。

大丈夫ですかーー!
動けるなら逃げてください!!
助けが必要なら、応えてください!!

と、叫ぶも嗚咽に誓い奇声しか返ってこない。

なんとかして助けなきゃ!
裸になって、水中に入ろうとすると
親父に引き込まれる。

無理だ!!
こんな暗い中で場所も特定出来ないのに!
お前が死んでしまう!!

と、押し問答。
している間に、声は次第に小さくなりしなくなった。
涙しか出てこなかった。





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